法華津峠

松山・大洲方面から車で宇和島市に向かうと、大抵の場合国道56号線を通ります。
その国道のトンネルを抜けて宇和島市域(旧・吉田町域)に入った直後、右手に眺望が得られます。

峠に差しかかると雪が深くなった。父親たちはドライブインに車を停めて、タイヤにチェーンを巻きはじめた。そのあいだに近くを歩いてみることにした。駐車場の向こうは雑木林だった。踏み荒らされていない雪が下草を覆い、木々の梢に降り積もった雪が、ときどき乾いた音をたてて地面に落ちた。後ろを振り返ると、ガードレールの彼方に冬の海が見えた。穏やかに凪いだ、真っ青な海だった。何を見ても、懐かしい思い出に吸いよせられそうになる。ぼくは心に固く蓋をして、海に背を向ける。

上記の引用は第一章の1。
法華津峠に間違いないという確証はないのですが、宇和島周辺で上記の描写に該当する地点は他にひとつもありません。

法華津峠

この写真は、宇和島市街へとアプローチする際に撮影したものです。
宇和島観光の期待に胸ふくらませた私と、人生に何の希望も抱いていないサクとでは、たとえ同じ景色を眺めていたとしても違うものを見ているはずです。
そもそも、サクが見たのと同じ景色ですらありません。この日は雪、積もってませんでしたし。積もってたとしたら、私も気軽に写真撮影なんてできなかったはずです。チェーンの付け方を知らないから。

ただ、サクと同じように内省的な気分になるには、実にいい場所だと思いました。
仕事を休んでこんなところまで観光に来てもいいんだろうか、などと考えたり。

冗談ですけど。